緋色のサファイア第4話

前書き

本当は3話と同じ話だったのですが、長すぎるのでぶった切りましたw こちらの挿絵はまとも(なつもり)です!楽しんでもらえますと幸いです♪

 

 

前回のあらすじ

ハルカは政府軍に保護されてから、ブレイズ、ミアにある程度の自衛戦闘と社会生活を営めるよう訓練を受けていた。ある日の自由時間、基地からなかなか外出できず、息苦しく思っていたハルカは勝手に基地の外に出てしまう。基地の外に自生している草木を楽しく見て回っていたが、突然基地が襲撃を受ける。

 

 

基地内は突然の攻撃に混乱状態に陥っていた。基地司令部がレーダーを確認するも、何も映っていない。

「空対地ミサイル接近!方位245!距離4km!」

「くそっ、迎撃せよ!CIWS、打ち方はじめ!」

ガトリングガンからザーッという音とともに弾が連射される。ミサイルは基地のそばで撃墜された。

「IRセンサーに感あり!」

「くそっ、光学迷彩搭載のステルス機か!」

「IRミサイル発射準備!携帯式でもいい!とにかく撃て!」

兵士が敵戦闘機の対応に追われる。

 

「おい!誰かハルカを見てないか?!」

アシュリーが叫ぶ。

「3時間ほど前に講義、そのあと自由時間にしたのですが、それ以降は見てません!!」

「クソッ、早く見つけてシェルターに避難させないと…!」

「ワイ、探してくるわ!」

ブレイズがハルカを探しに基地の外に出た。

「クソッ、ハルカの奴、いったいどこ行ったんや…!今回の襲撃はアイツを狙って来てるのかもしれんっちゅうのに…。」

基地内は既に他の兵士が探している。基地の外に出てしまったのだろうか。確かに、ここに来てからハルカには自由に外出させてやれなかった。ハルカは大人しく言うことを聞いてくれていたが、案外ストレスが溜まっていたのかもしれない。いや、今は考え事をしている場合ではない。早くハルカを見つけなければ。

「うわっ!」

ブレイズの所にいくつもの紫色の液滴が飛んできた。ブレイズはギリギリでかわした。

「あのブサイクも来てるんか…厄介やな…。」

「あら、失礼ね。」

煙の中から、コツコツと足音が聞こえてきた。

「へへっ、前はワイの顔見たら逃げやがったのになぁ。少しは強くなったか?」

「さぁね。ま、こうしてやり合うのも久しぶりじゃない?」

毒使いのキョウカだ。墜落したアシュリーの救援にプランティアでチラっと見て以来だ。

「ま、これだけ派手に攻撃してくるって事は、今回は逃げるつもり無いんやろ。目的は何や?」

「ふふっ、それを言ってしまったらつまらないじゃない?」

キョウカが毒の液滴を飛ばしてきた。これに触れるとただじゃ済まない。ブレイズは火炎放射で液滴を焼き払う。

「こんなもん、いくら飛ばしてきても無駄や。こっちから行くで!“大地の怒り!”」

ブレイズが手を地面に当て、次の瞬間、地面の至る所から炎が噴き出した。キョウカは避けるのに精いっぱいのようである。

「くっ、流石ね…。」

「オラオラァ!また逃げてるだけになってるで!」

「まったく、危なっかしくて見ていられんな。」

低い声が響いた。次の瞬間ブレイズの炎は静まり返り、辺りには煙のにおいだけが残っていた。

「なんやて!?お前ら二人も来たんか?!」

「もう、手出ししなくて良かったのに。」

少し遅れて現れたのは、なんと敵軍の最高司令官、ダルクである。

「フン、お前一人では荷が重かろう。」

「なんでや…そんなに重要な事があるんか…?」

ブレイズは一気に不利になった。ダルクには1対1でも勝てるか怪しかった。そして、2人も来たということは、ハルカを狙って来たのかもしれない。彼女を探しに行く余裕はなかった。寧ろ、ここから逃げるよう何とか伝えなければ。

「で、ブレイズ大佐、女はどこにいるんだ?」

「何のことや?ワイは独身やぞ?」

「この基地にいるのは分かっている。ハルカというミュータントが居るだろう?ハルカを引き渡せば、基地への攻撃はやめさせ、撤退すると約束しよう。」

「ああ、最近見つかった、あの変なミュータントか。ワイはそいつの事なんてほとんど知らんで?この基地にもおらん。」

「仕方ない。2対1というのも気が乗らないが…。」

ダルクは漆黒の剣を展開した。来る。

「…ちっ。」

ブレイズが咄嗟に炎の刀を展開する。ギンという音とともに、炎の刀はダルクの黒い剣を受け止めた。

「ほぉ、刃を交えてもその炎は消えないか。かなり鍛えたようだな。だが、そう長くはもたないだろう。」

ブレイズがダルクの剣を振り払う。

「今ので少々削られたな…。全く、厄介やで、エネルギーを吸収してくるのは…。」

「炎ごときで俺の闇を照らせると思うか?」

「さぁな。やってみんと分からんで?」

ブレイズとダルクは激しく剣の裁き合いを見せる。しかし、刃を交える度にブレイズの顔からは余裕が無くなっていく。

「しまった!」

ブレイズはキョウカを気にする余裕がなくなっていた。キョウカの毒の剣が、ブレイズの背に傷を付けた。

「あら、2対1はさすがに厳しかったようね。あなたが戦えるのはあと3分といったところかしら。」

「その間に、お前だけでも燃やしたるわ!オラァ!」

炎の刃でキョウカに斬りかかる。あと少しのところで黒い刃が行く手を阻む。

「俺の相方が邪魔してすまないな。だが、俺を無視するとはいい度胸だ。」

「ほな、あのブサイクを黙らしてくれるか?お前を焼き尽くしたらあいつはワイがじっくり料理したる。」

「まだ軽口を叩けるのだな。少しは後ろも気にしたらどうだ。」

「なにっ?!」

キョウカの毒の剣が襲い掛かってきていた。かわしきれない。

「チッ、ここまでか…。」

ブレイズはそっと目を閉じた。あーあ、マジかよ…。ま、後のことは頼んだで、アシュリー。

 

1秒後、妙な音にブレイズは気付いた。炭酸水が泡を出す音のようだ。そういえば、最後にコーラ飲んだのはいつだっただろう?ブレイズはくだらないことを考えていた。すっと目を開けてみた。もう体など動かないと思っていたから意外だった。何だ?ダルクが驚いた顔をしている。何がそんなに…。

「ん…?なんや…?っていうかワイ生きてるんか!?セーーフ!」

後ろからは、さっきの炭酸水のような音が聞こえる。敵と戦うときは、その相手から目を逸らしてはいけない。が、どうしても気になって後ろを振り返った。

「なっ…?!」

そこには、キョウカの剣を素手で受け止めるハルカの姿があった。手からは蒸気が立ち上っている。キョウカの毒の剣はみるみる細くなり、遂には真っ二つに折れてしまった。

「お前…こんなことができたんか…?」

「ほぉ…これが新たに見つかったミュータントか…。なかなか得体が知れん、キョウカ、下がれ!」

「おいでなすったわね。」

ダルクとキョウカが距離を取る。

「ブレイズ、大丈夫?!」

「あ、ああ、何とかな…。ちょっとフラつくけどな…。」

「って、ケガしてるじゃない!もー!毒にもやられたの?!」

ハルカは心配そうな顔をして、ブレイズの傷口に触れた。

「あいたっ!ちょっと沁みるでこれ!」

「文句言わない!急ごしらえなんだから仕方ないじゃん!頑張って!」

ハルカは即席の薬を傷口に塗った。

「おお…!治っていくで!意識が飛びそうやったけど、スっと楽になったわ!」

「解毒はできたみたいだね…!っで、どうする?」

 

 

「とりあえず逃げろ!狙いはお前や!ワイが何とか食い止める!」

「そ、そんな!ブレイズ置いて逃げるなんて…!」

「我々もなめられたものだな。お喋りとは…。」

ダルクから黒い槍がいくつも飛んでくる。

「うわわっ、ブレイズ、あの新キャラ何?!こんなにキャラ多いと読者も大変なんだけど?!」

「あー…敵の総司令官や。っていうか読者って何や?まぁとにかく、ヤバイで。」

「何がどうヤバイのー?!」

「あいつの攻撃はオブシディアン的な感じなんや。つまり触れたらみるみるエネルギー吸われてしまう!」

「そ、そんなの手も足も出ないじゃん!」

「せやから、何とかせなアカンのやけどなー…。さっきから避けるばっかりで、なんもできひん…!」

「うわわっ!」

ダルクがハルカに斬りかかってきた。何とか、ハルカはナイフで受け止める。

「案外いい動きをするな。ハルカとやら。」

「ふえええ、なんか力が出ないよー!」

そう言いながら、スッと力を抜いてナイフを手離し、ダルクの剣から逃れた。すぐに別のナイフを展開し、ダルクに斬りかかる。

「ほぉ、この俺に傷を負わせるとは…。それも、防具をすり抜けてきたな…。」

「ガンマナイフだからね~!電磁波にそんなの効かないよ♪」

「はよ逃げろ!狙われとるぞ!」

「えっ…。」

キョウカが、オブシディアンの投げナイフをハルカに投げつけていたのである。ズブっという鈍い音とともに、ハルカの背に刺さった。

「あぐっ…!」

「練習の甲斐があったわ。」

「全く、俺に当たったらどうするんだ?ハルカを連れて撤退だ。ブレイズは俺が止める。」

「痛い…。ブレイズ助けて…!」

キョウカがハルカに毒を注入し、そのまま連れて逃げ始める。

「待てやコラァ!逃がさへんで!」

「相変わらず暑苦しいな。」

ダルクが大量の投げナイフをブレイズに投げつける。

「邪魔しやがって!」

ナイフを打ち払うが、その度にエネルギーが削られる。

「ハルカ!何とか逃げろ!クソッ!」

「無駄だ、あいつはもう動けん。」

「せめてお前だけでもぶちのめして…!」

「全く、お喋りなものだ。今日はこの辺にしておいてやる。」

ダルクはナイフを投げながら逃走を始めた。

「チッ、二人そろってなんちゅう逃げ足の速さや。」

ブレイズが追いかけるも、地面に仕掛けられていたダルクの罠にはまってしまう。ブレイズが罠を踏み、突如、黒い蜘蛛の巣のような物が展開する。

「クソッ、なんやこれ!全然力が入らへん…!」

「少し頭を冷やすんだな。それでは守るものも守れん。」

ダルクとキョウカはハルカを抱えたまま、いつの間にか垂直着陸していたステルス戦闘機に乗り飛び去って行った。罠が解け、ブレイズは戦闘機がいたところに駆け寄って行った。少しでもハルカが逃げにくくなるようにしようとしたのか、彼女の靴が落ちていた。

「またや…。ワイは何の為に…。」

敵戦闘機部隊は撤退し始めていた。基地の方からは敵部隊を撃退した喜びの歓声が聞こえた。アシュリーが後ろから駆け寄ってきて、ブレイズに声をかける。

「ブレイズ、こんな所に居たのか。敵は撤退したぞ!無事か?!」

「…あいつが…。」

「おい…なんだよ…。」

「ハルカがダルクに連れて行かれた…。ワイはあいつに何もしてやれんかった…。」

「なっ…。」

ブレイズはその場にがっくりと膝をついた。

「ブレイズ、落ち込んでいてもハルカは戻ってこない。すぐに指令に報告して救出作戦を立てよう。」

「あ…あぁ…。そうやな…。すまんかった…。」

ブレイズはアシュリーに支えられ、基地にとぼとぼと戻っていった。

 

 

 

あとがき

連れて行かれてしまいましたね~…。なんてこったい/(^o^)\

5話も頑張って書くので、読んでいただけると喜びのあまり気絶します笑

 

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2023年11月23日