緋色のサファイア第3話

前書き

今回は長くなったので3話と4話の2つにぶった切りました!そして挿絵が足りなかったので3話の挿絵は適当になってしまいましたすみません…。

 

前回のあらすじ

ハルカの存在が敵反政府組織ダルク軍に知られてしまい、政府軍はハルカを保護することを決定する。惑星プランティアでハルカに救助されたアシュリー・ナガハマ少佐、特殊能力持ちのミュータント、ブレイズ特務大佐に加え、アシュリーの部下、ミア・スチュワート少尉が教育係としてハルカの面倒を見ることとなる。ハルカは3人から教育を受け、慣れないながらも平和な日々を過ごしていた。

 

柔らかな日差しの降り注ぐ朝、少女はぐっすりと眠っていた。

「よーーーし!今日は待ちに待った近接戦闘訓練や!!」

バァン!とハルカの部屋の扉が勢いよく開き、ブレイズの声が響き渡る。

「ん…ブレイズ…?もうちょっと寝かせて…。」

「何寝てんねん!とっくに集合時間やぞー!目覚ましのチャイムが聞こえんかったんか?!」

ブレイズはハルカの毛布を引っぺがし、ハルカを叩き起こした。

「ふえええ、わかったよ~!」

体操服に着替えたハルカは、運動場へと重い足を引きずって歩いて行った。まだこの惑星の1日の長さには慣れそうにない。

 

「よし!今日は近接戦闘訓練や!!」

「えー、殴り合うの?」

「まぁそうやけど、大事なのは近接武器を持つ相手との戦い方や!オブシディアンの事はスチュワートに聞いたな??」

「えーっと…ミュータントの力を吸収して…何だっけ…?」

「あのなぁ…。俺らは遺伝子の守りっちゅう変な力で守られてるんやけど、それを貫通するには、別のミュータントの攻撃で守りを中和するか、コイツを使うんや。」

「使われたらけっこうヤバいよね…?」

「ヤバイで~。この武器を持つ奴に絡まれたら、全力で避けなあかん!」

そういうと、ブレイズはナイフを取り出し、ハルカに斬りかかる。

「うわっ!」

ハルカが腕でガードするが、ナイフはハルカの腕にすぐに到達した。

「ま、このナイフはゴム製の練習用のやつなんやけどな。今のだと、お前の腕はもう無いで?」

「うっ…痛そう…。」

「ナイフだけやなくて、槍とか持ってるやつもいるからな。まぁ、槍は目立つからオブシディアンが見えたら距離を取って戦えばええんやけど、ナイフみたいな小さい武器は隠し持てるから、暗殺とかにも使われるから何としてもよけなあかん。」

「わ、分かった…!じゃぁ練習する!」

「うむ!その意気や!っていうか、オブシディアンに触ったことあるか?」

「えー、無いなぁ…。ミアは見せてくれたけど、触らせてはくれなかったし…。」

「じゃ、ほれ!」

ブレイズはオブシディアン製のナイフをハルカに渡した。

「刃の部分に少し触ってみな?」

「うん…あっ…。」

ハルカは力が抜けていくのを感じた。

「そのまま、何か技出せるか?」

いつもは色々な薬剤をハルカは出すことができるが、全くできなかった。

「何もできない…いつもより力も入らない…!」

「せやろ?これに触れてる間は普通の人間になってしまうねん。」

「大変…。」

「ヒトゴトやないで?ミュータントはいろんな奴に狙われるからな。ということで特訓や!」

ハルカはブレイズに、近接武器のかわしかたを徹底的に叩き込まれた。ミュータントの力によって普通の人間よりはるかに素早く動けるが、まだまだ、ハルカの動きはミュータントの中では良い方ではなかった。訓練は夕方まで続いた。途中、ブレイズが部下を呼び出し、ヒソヒソ話しているのが少し気になったが、気にしている余裕はなかった。

 

今回もハルカは体力を使い果たし、フラフラと宿舎に戻った。シャワーを浴びて食堂に行く。今日の食事はフライドチキンだ。野菜サラダに、プリンも頼んだ。席を探していると、アシュリーを見つけた。昨日から、会っていなかった気がする。

「アシュリー!ごはん?一緒に食べよ!」

「おお、ハルカ。訓練はどうだ?」

「いやー、キッツイね~。でも、ブレイズも忙しいのに私の為に訓練してくれてるから…頑張らないと!」

「まぁ、あまり無理はしないようにな。あいつ、限度ってものを知らないからなぁ…。」

「大丈夫だよ!無理なことは言われないし、親切にいろいろ教えてくれるよ!」

「だと良いが…。ま、何かあればいつでも相談してくれよ。」

「うん!ありがと!」

たわいもない話をしながら、二人は夕食を取った。

 

あとは休むだけと思ってハルカが自分の部屋に戻ると、信じられない光景が広がっていた。ベッドが無いのである。

「え…?!私のベッドは…?!」

「たいへんだー!ハルカさんのベッドが裏山の頂上にあるらしいぞー!誰だこんなイタズラしたのはー!」

後ろから、棒読みで兵士が叫んでいるのが聞こえた。

「信じられない…。今からベッド回収しに行くの…?」

ハルカは半泣きになりながら、アシュリーの部屋に向かった。

「あしゅりいいー!」

「うわぁ!どうしたどうした!?」

勢いよくハルカが飛び込んできて、アシュリーは驚いて飛び上がった。

「私の!ぐすんっ、私のっ…寝れない…!」

「落ち着けって、どうしたって言うんだ。」

「だって、ベッドが山に…!」

アシュリーは思い出した。これも鍛錬だと言って、ブレイズが新米兵士のベッドをこっそりと離れたところに移動させ、疲れた兵士に取りに行かせるのを。

「あー…理解した。あいつ…いつかやると思っていたが…。」

「ううっ…取りに行くの、ついてきてほしい…。」

「全く、ブレイズって奴は…。いいぞ、一緒に行こう。」

ミュータントの桁外れの筋力なら一人で運べそうなものだが、夜の山道は心細いだろう。気の毒に思いながら、出発準備を整えた。

 

護衛の兵士を4人程引き連れ、山を登って行った。山といっても、片道30分もかからない低い山だ。だが、ベッドをかついで歩くとなると、相当しんどい。

「ハルカさん、すみません…。ハルカさんは兵士じゃないんだからって止めたのですが、目を離した隙に持っていかれました…。」

兵士がハルカに話しかける。

「ううん、良いの。皆と山登りできて、ちょっと楽しいし…。」

6人は頂上に着き、ベッドが置かれているのを見つけた。

「山の頂上にベッドが置かれているなんて、何度見てもシュールだな…。」

「少尉、自分もやられたことがあります。怒る気力もなくなりますね。」

「やった!見つけた…!これで寝られる…!」

6人はベッドを分解し、涼しい夜風に背中を押されながら、それぞれパーツを担いで山を下りて行った。部屋に戻ったハルカは、少し森のにおいが付いた寝床を懐かしく感じながら、電源が落ちるように眠りについた。

 

翌日。

ブレイズがハルカの部屋のドアを勢い良く開けた。何度目だろう。

「ハルカ!寝れたか?!昨夜は大変だったな!わっはっは!」

「ん…。あ!!ブレイズ!!許さないんだからーっ!」

「まぁまぁ、そう怒るなって。お前普段、ワイらとしか喋ってないやろ?せっかく色んな奴がいるんや。もっとほかの兵士とも喋る良い機会になると思ってな。」

「うー…。まぁそうなんだけど…。」

なんだか、うまく丸め込まれた気がする。

「ほら、今日はスチュワートの講義やろ?寝ぼけてたらしばかれるで?」

「わ、分かったから!すぐ行くから!」

「はいはい、じゃ、遅れんようにするんやでー!」

そういえば、訓練もないのにブレイズは何をしに来たのだろう。昨夜のことを謝りに来てくれたのだろうか。謝罪の言葉は一切なかった気もするが。

 

眠い目をこすりながら、ミアとの約束の時間に間に合わせたハルカは、椅子に座りながら少しウトウトしていた。そういえば、こんな早い時間に起きるのはこっちに来てからだ。住んでいたプランティアと今いる惑星では一日の長さが異なるのだから、比べられるものでもないが。

コツコツと、軽やかな足音が聞こえる。ドアが開き、いつものミアが現れる。

「おはようございます、ハルカさん。昨夜は大変だったようですね。」

「おはよう、ミア。ほんと、ひどい目に遭ったよ…。」

「大佐もちょっとやりすぎですね…。お疲れさまでした。」

「まー、みんなと話せたし、良かった…ことにするね!」

「本当にごめんなさいね。では講義を始めましょうか。」

最近は、一般常識の講義は減り、主に歴史やこの世界で起こっている事を主に教えてもらうようになっていた。

「はい、では今日はここまで。少し早いですが、あとは自由時間とします。」

「ミア、今日もありがとう!何かあるのー?」

「ええ、少し仕事がありますので。また明日、続きをしましょう。」

「はーい!あ、晩ごはん行くときは誘ってね!」

ハルカとミアは部屋を後にした。ハルカは何をしようか迷い、基地内をウロウロしていた。

「うーん…もう基地はけっこう見学したしなぁ…。外に出たらダメかなぁ…。見張りの人もいるし、勝手に出たら叱られるよね…。」

ハルカはそう言いながら、基地のフェンスのあたりに来ていた。しばらく基地内でしか過ごしていない。そろそろ、外に出たかった。

「ここには、どんな生き物がいるんだろう…?」

プランティアでは、色々な生き物を観察したり、育てたりしていた。暇つぶしのようなものであったが。最近は忙しく、時折世話をしにプランティアに送迎してもらうくらいだった。思い出したら、好奇心が抑えられなくなってきた。

「まぁ、すぐ戻れば良いよね…?」

人が近くにいないことを確認し、身軽にサッとフェンスを飛び越えた。辺りは荒涼としていたが、いくらか低木や草が生えていた。

「あっ、こんなの見たことない!ここにも変な形のが生えてる…!」

大喜びで草木を見て回った。あまり見たことのない植物がたくさん生えていた。少し持ち帰ってもいいだろうか。しかし育てるとなると光に当てなければならないし、そうなるとアシュリー達にバレてしまいそうである。

「うーん…流石に、ちゃんと許可もらってからにしよう…。」

そう呟いて辺りを眺めると、低木に実がなっているのを見つけた。

「これくらいなら、持って帰っても良さそう!」

ハルカは赤く熟した小さな実を一つ取り、においを嗅いでみた。甘い香りがする。そろそろ帰ろうと基地の方を見たら、煙が立ち上る光景が目に映った。数秒遅れて爆音が辺りを振動させた。

「えっ?!なに?!」

爆音の他には何も聞こえなかった。冷汗が背中を伝う感覚を覚えた。急に不安に駆られ、ハルカは基地に向かって走り出した。

 

 

あとがき

さすがに8000字近くありましたので、2つに分けましたね~…。無計画さがバレる…笑 4話もよろしくお願いしますm(_ _)m

 

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2023年11月17日