緋色のサファイア第2話

前書き

随分と1話から時間が経ってしまいました、、ゴメンナサイ、、、今回は平和な回となります。のんびりとした感じを楽しんでもらえますと幸いです!

 

前回のあらすじ

テロ組織との惑星プランティア防空戦に参加していた政府軍機が撃墜され、プランティアに不時着した。撃墜された機体のパイロット、アシュリー少佐はプランティアに住んでいた少女ハルカに救出され、一命をとりとめた。ハルカの家を後にし、自軍へと合流しようとする中、テロ組織幹部のミュータント、キョウカとの戦闘となる。通常の人間では対抗不可能であり、死を覚悟した瞬間、ミュータントであるハルカが現れ、応戦する。しかし一歩及ばず、キョウカに倒されてしまう。間一髪で政府軍の特務大佐にしてミュータントでもあるブレイズが到着し、キョウカを追い払うことに成功、ハルカもアシュリーと共に救助され、近隣の基地へと救急搬送される。

 

 

輸送機が基地に到着した後、すぐにハルカは医療室に運ばれた。血まみれではあったが、検査を行ったところ何も異常は見つからなかった。医務官らはどうしようもなく、ハルカの身体をきれいにして寝かせておくしかなかった。

アシュリーも検査を終え、医務室から出てきた。部屋の外にはブレイズが待っていた。

「ブレイズ!ハルカはどうだった!?大丈夫なのか?」

「ああ、全く異常はないそうだ。見舞いに行くか?」

ブレイズの言葉が終わる前に、アシュリーはハルカの病室に走っていった。あいつ、あんなに走るの速かったっけ…?と思いながらブレイズも後を追った。

 

「ハルカ!無事か?!」

アシュリーがドアにタックルしながら病室に突入すると、ハルカは静かに眠っていた。傍らにいる看護官に少し睨まれた気もするが、お構いなしにハルカの元へと駆け寄る。ハルカは水色の患者用の服に着替えていた。穏やかな顔で眠っているのを見て、少し安心した。改めて見ると、けっこうかわいい。見た目の年齢は20歳前後だろうか。もっとも、ミュータントである以上、自分よりはるかに長く生きているのだろうが。

「おいおい、お前どんだけ心配だったん。ドア壊してもうてるやん…。」

後ろからブレイズが呆れた声で話しかけてくる。振り向くと、さっきのタックルのせいでドアが外れていた。

「すまんな、後であいつに直すよう言っとくわ。あいつ、自分のせいで女の子死なせてしまったんちゃうかと心配しててな。大目に見たってくれや。」

看護官が呆れた顔で、しかし少し嬉しそうに、アシュリーの方を眺める。

「よかった、本当に良かった…。ハルカ、ごめんな…。」

アシュリーが、泣きながらハルカの手を握りしめていた。

「まったく、大の男が泣きじゃくって、みっともないで。お前ももう休め。男部屋は離れてるけど、護衛もいるから大丈夫や。」

「ああ…すまない、ブレイズ…。また明日、会いに来よう…。」

翌日、ハルカに会いに行こうと朝早起きしたアシュリーは、部屋を出たところで待ち伏せしていた部下に呼び止められ、基地司令の元へと連行されていった。民間人を危険にさらした事、病室のドアを壊した事で始末書を書かされる羽目になり、他に溜まっていた事務仕事を片付けなければならず、ハルカの顔を見に行くことはできなかった。アシュリーは疲れ果て、シャワーだけ済ませて士官室のベッドに倒れこみ、そのまま電源が切れるように眠りに落ちた。

 

翌日、アシュリーが目を覚ますと、少し窮屈な気がした。いつもより暖かい。少し良い匂いもする。隣にはハルカがぐっすりと眠っていた。なんだ、夢か…二度寝しようとしたが、すぐに夢ではないことに気づいた。本当にハルカが横で寝ているのである。アシュリーの頭はフル回転を始める。いやいやいや、女の子と一緒に寝たとか、マズイんですけど?!え、もしかして俺ってクビ?懲戒免職??せっかく生きて帰って来れたのに、無職とか勘弁してくれww

「まて、落ち着け…。きっと何か方法はあるはずだ…。そうだ、ハルカにお願いして、トイレにでも行こうとしたけど道に迷ってしまったことにしてもらおう。うん、それがいい…。」

アシュリーはひとまず着替えて、部屋の外に誰もいないことを確認する。うん、今がチャンスだ。ハルカを起こして、事情を説明しよう。

「ハルカ、起きてくれ。今俺は人生最大のピンチなんだ。」

「ん…あしゅりー…?」

俺の名前を覚えてくれていたことに嬉しくなった。だが今はそれどころではない。

「いいかハルカ、朝、君が俺と同じ部屋から出てきたことがバレると俺はクビになる。わかるか?」

ハルカは首をかしげる。ハルカが首を傾ける程、俺の首が飛ぶ可能性は上がる。マズいぞ…。

「細かいことはいいから、誰もいないうちに部屋から出て、その辺にいる人に道に迷ったと言ってくれ。それだけでいい。」

「う、うん…。」

ハルカはニコっと優しく笑顔を浮かべ、ドアに手をかけた。その瞬間、バァン!!とドアが勢いよく開き、ハルカの顔面にドアがクリーンヒットした。

「少佐殿!!何時だと思ってるんですか!!早く来てください!!」

俺のしっかり者の部下、ミア・スチュワート少尉だ。俺を起こしに来てくれたらしい。そして彼女が部下でいてくれるのもおそらく今日までだろう。ドサッという音とともに、ドアに叩きつけられたハルカがその場に倒れこむ。

「えっ…?!ハルカさん?!なんで少佐殿の部屋に!!こっ、これはどういう事ですか少佐?!」

「ま、待て、俺が連れ込んだわけじゃない!朝起きたら、ハルカがいつの間にか入ってきていたんだ!頼む、信じてくr」

ドガっという鈍い音とともに、アシュリーは膝から崩れ落ちた。殴られた…のか…?俺は一応上官だぞ…?気づいたら、他の部下たちに囲まれていた。今日も基地司令の所に連行される羽目になるとは…。基地司令にこっぴどく叱られたが、夜中にハルカがふらふらと廊下を歩いて俺の部屋に入る姿が監視カメラに写っており、今回はお咎めなしで済んだのが幸いだった。スチュワート少尉に吹っ飛ばされたハルカは大丈夫だろうか…?

 

司令官室から出たところで、スチュワート少尉に呼び止められた。

「あの…、さっきは申し訳ございませんでした!!話は聞きました!どんな罰でも受けます!!」

「なに、勘違いさせた俺も悪かったさ。起こしに来てくれたのにすまなかったな。」

スチュワート少尉が、顔を上げ、安心したような笑顔を浮かべる。どうやら、誤解は解けたらしい。俺の首も当分安泰だといいんだが…。

「ところで、さっき君に吹っ飛ばされたハルカは無事か?」

「ハイ!一瞬気絶しておりましたが、すぐに起き上がってくれました。今は医務室で検査を受けています。そうだ、ブレイズ特務大佐殿が、ハルカさんと一緒に昼食でもどうか、と聞いてましたよ。」

「そうか、それなら安心だ。ブレイズにはこちらから連絡しておく。ご苦労。」

スチュワート少尉は、ピシッと敬礼をして仕事に戻っていった。

 

午前の仕事をこなした後、約束の時間になった。アシュリー、ブレイズ、そして、ハルカを吹っ飛ばしたスチュワートがハルカの居る病室に集まった。食堂から持ってきた食事を広げる。

「アシュリー、お前ハルカちゃん連れ込んで悪いことしてたんか?w」

「やめろよブレイズ、本人の前で…。」

「大佐、セクハラですよ?報告しておきますね。」

「まぁまぁ、そう堅いこと言うなってスチュワート。こうしてみんな元気になったんやし、万事OKやん!」

「それがよくないんだよ。ハルカの存在が敵に知られてしまったからなぁ…。」

ハルカはきょとんとした顔で3人の会話を眺める。

「まぁ暗い話はその時考えればええやん。今は飯や!しもた、酒買ってないわ!」

「大佐、勤務中のお酒はやめてください。」

「冗談や。ほな、食べよか!」

皆で買ってきた物を食べ始める。ハルカにはサンドイッチを買ってきた。

「これ、いいの…?」

「何言ってんねん、けが人はちゃんと食べないとアカンでw。アシュリーが持ってきてくれたんや、食べようや。」

「う、うん!いただきます。」

いただきますという言葉を聞いて、ハルカ以外の3人はきょとんとした。どういう意味だろうか。しかし、ハルカに余計なことも聞くまいと、3人は聞き流すことにした。

「せや、アシュリー、ハルカってうちで暫く預かるんやろ?」

「えっ、そんな話聞いてないぞ。そうなのか?」

「なにゃ聞いてないんか!もう本人には了承して貰ってるで。なぁハルカ、よろしくな!」

「う、うん、よろ、しく…。」

「そうなのか…!まぁ確かに、一人で置いておくよりは我々のそばにいる方が良いだろうな…。いつでも家には戻れるように手配はしておくから、安心してくれよ、ハルカ。」

「あ、ありがと。」

「しっかし、人と話すのは久しぶりなんやろ?言葉もカタコトやし…。教えることは盛りだくさんや!とりあえず、言葉とか諸々の先生はスチュワート、お前に任せるわ。自衛戦闘の訓練は、同じミュータントの俺が教えたるから、覚悟せい!」

「ハッ、このスチュワート、任務を拝命致しました!」

「まったく、相変わらずお堅いねぇ、もっと気楽に行かんと、身が持たんで。」

「おいおい、ハルカに戦わせるのか?」

「なに、最前線に放り出すわけやない、何かあったときに自分の身くらいは自分で守れるようにしといたろうと思ってな。あ、あとアシュリー、お前ここの基地に転属な。大丈夫や、俺もここの所属やから。」

「そうか、分かった……は??何勝手に決めてるんだ?!」

「大丈夫やって、スチュワートも一緒に転属や、よかったな!」

「任務とあらば、仰せのままに。」

「まじか…これが大佐の権力か…。引越ししないと…。」

3人の会話を聞きながら、ハルカはにっこりとほほ笑んでいた。ハルカはやっと、出されたサンドイッチに手を付ける。

「…!!す、すごい…!」

ただのサンドイッチだが、ハルカが大喜びで食べているのを見て、3人は驚いた顔で呆気にとられていた。

「そ、そんなにうまいか?」

ハルカはいっぱいに頬張り、何度もうなずく。

「今までどんなマズイ物食べて生きてきたんだ…。」

「ハルカさん、こういう時はすごい、じゃなくて美味しいって言うんですよ?」

「おっ、早速教育してるな!ちゃんと言葉覚えるんやでー!」

楽しいひと時はあっという間に過ぎ、それぞれ自分の仕事に戻っていく。

 

数日後

「いいですか、ハルカさん、女の子が男子トイレに入ってはいけないんですよ?」

「えー、ごめんなさい…。」

ハルカは言葉をかなり喋ることができるようになっていた。しかし、基地の人間が常識だと思っていることはハルカにとっては新しいことばかりだ。

「スチュワート、ご苦労さん。」

「アシュリー!」

「ハッ、ナガハマ少佐殿。順調に教育は進んでおります。言葉を覚えるのが早くて助かるのですが、その…。」

「ん?何だ?」

スチュワートはアシュリーを引っ張り、少し離れたところで小声で話す。

「男性である少佐殿に相談するのもちょっとアレなんですが…。せ、性教育の方をどうしようかと思いまして…。さっきも男子トイレから出てきましたし…。」

「あっはっはっは!どうやって用を足したんだろうな!なに、困ったら相談してくれるといい。トイレを間違えることくらい、基地連中も大目に見てくれるだろう。」

「そのくらいで済めばいいのですが…。」

「ま、そのうち覚えていくさ。彼女は普通の人間よりはるかに強いんだから、間違っても襲われるなんてことはないだろうしな。」

「アシュリー?ミア?どうしたの??」

ハルカがヌっと話に入ってくる。

「うわっ!なんでもありませんよ!さぁ、勉強に行きますよ、ハルカさん!」

「はぁーい。」

ミアはハルカを引っ張って別の部屋へと向かっていった。

 

柔らかな日差しが降り注ぐ午後、ハルカは少しウトウトしながらミアの講義を聞いていた。思わず目を閉じてしまったが、何やら恐ろしい空気のようなものを感じて目を開けると、目の前にミアが仁王立ちでハルカをにらんでいた。

「ハルカさん?私の講義で寝るとはいい度胸じゃありませんか。」

「わわわ…ミア、ごめんなさい!頑張るから怒らないでえ!」

ハルカはここ数日でよく喋るようになっていた。いろいろなことを教わった。言葉、文字、この世界の事、他人との関わりの事、男子トイレではなく、女子トイレを使うこと…。ハルカは常識といったものはあまり持ち合わせていなかった。その常識も、なかなか覚えることができないようだった。一方で、計算や読み書きといったことはすぐに覚えることができた。

「はい、今日はここまで。明日、朝食後にここに来てくださいね。」

「うん!ありがと!ねー、この後ご飯たべよー?」

「私は少し仕事があるので…。ごめんなさいね。」

「えー…そっかぁ…。」

「もう…仕方ないですね…。じゃぁ行きましょうか。」

「やったー!ミアとごはん~♪」

無邪気なハルカの顔を見て、ミアは明日も頑張れるような気がしていた。実は、ハルカと喋ることが日々の楽しみとなっていたのだ。ただ、ハルカとつい喋りすぎ、仕事が終わるのが遅くなって睡眠不足気味ではあったが。

今日のメニューは、肉がたっぷり入ったハンバーガーに、野菜サラダだ。ハルカはジンジャーエール、ミアは果物のジュースを取り、席に着いた。二人で食事をしていると、ブレイズが現れた。

「あ!ブレイズー!」

ハルカが嬉しそうに手を振る。

「ブレイズ特務大佐!お疲れ様です!」

ミアが敬礼をする。

「おお、楽しそうやん。ワイも混ぜてくれや。」

「うん、一緒に食べよ!」

「いやー、むさ苦しい基地で美女とメシやなんて、今日はええ日や!せや、ハルカに伝えとくことがあってん。」

ミアは嫌な予感がした。

「明日からこのワイがハルカに戦い方を教える!ということで、時間になったら叩き起こしに行くから楽しみにしといてな!」

「大佐、あまり無茶はしないでくださいよ?基地に居るとは言え、ハルカさんは民間人なのですから…。というわけでハルカさん、明日の講義は明後日に延期しましょう。」

「うん、分かった。よろしくね、ブレイズ!」

食事が済み、ハルカは基地を散歩し、後の2人は持ち場に戻っていった。

 

夜の基地。ハルカはなかなか寝付けなかった。夕食の時、ブレイズが横の席に着く際、少しブレイズに触れた。その瞬間、体が熱くなったのだ。ブレイズは炎使いだからかとも考えたが、外部からの熱ではなく、体の奥から熱くなるような印象だった。それが気になって眠れないのだ。前、病室で一緒サンドイッチを食べた時もそうだった。飲み物を渡してくれた時に手が触れ、体が熱くなるのを感じた。どうしてしまったのだろう。

考えても眠れなくなるだけだった。ハルカは基地内の散歩に出かけた。夜はあまり出歩かないようにと言われていたが、すっかり忘れてしまっていた。柵をよじ登り、その上に腰かけた。涼しい風が穏やかに肌を伝っていくのを感じた。広がる荒野が、プランティアより一回り大きな月明りに照らされている。

「ハルカ殿?!」

下で声が聞こえた。見回りの兵士が気付いたのだ。

「危ないですよー!降りてきてください!」

「ありがと、大丈夫よー。」

「しかし…。」

「ねー、一緒にお話ししないー?」

若い兵士は、一瞬迷った。女性兵士の友人と話すことも多いとは言え、やはり女の子と話せるのは少しうれしい。まぁ、少しくらいなら良いだろう。

「じゃ、少しですよ!」

兵士は柵を登り、ハルカの横に座った。

「どうしたんですか、こんな夜中に。」

「うーん、なんか寝付けなくて!見回り?大変だね…。」

「いえ、昼は休みになりますから。」

「ねー、みんな、私のことどう思ってるのかなぁ?アシュリー達とはよく話すんだけど、他のみんなと話すことが無くて…。」

「うーん、ハルカさんの事は極秘なので、あまり我々の間でも話すことはないのですが…。自分は、その…かわいい子が来てくれて、少し嬉しかったですよ。」

「ほんとにー?じゃぁ、私ここにいても良いのかな?みんなお世話してくれるんだけど、なんか申し訳なくて…。一緒にいたいと思うんだけど、私は、一人でも生きていけるから…。」

「いえ、アシュリーさんの恩人なのですから、皆、むしろハルカさんのお世話をしたがっていると思いますよ。」

「そう?じゃぁ、できるだけみんなと一緒にいたいなー…。」

「ハルカさん居なくなったら、アシュリー少佐が宇宙の果てまで探しに行くと思います。ハルカさんが良ければ、できるだけここにいてあげてください。少佐、ああ見えて繊細ですから。」

「うん、わかった!ありがと!」

「では、自分は任務がありますので!」

兵士は柵を降り、敬礼をして基地の警備に戻っていった。残ったハルカの肌を、少し温度の下がった空気が優しく撫でていった。

「明日はブレイズが訓練するって言ってたし、そろそろ寝ないとなぁ…。」

ハルカは柵を降り、自室に戻って眠りについた。

 

翌日、ハルカの部屋に突如、爆音が響き渡った。慌ててハルカが飛び起きると、部屋が煙で白くなっていた。

「ゲホッ…なにこれ…ゴホッ…。」

「あーすまん、なかなか起きて来んから、花火で起こしたろうと思ってん。」

ブレイズの声が聞こえると同時に、すぐに警報が鳴り響いた。同時に、水が天井から大量に降り注ぐ。

「あー…このくらいでも火災報知器作動するんやなー。アハ、アハハハ…。」

すぐに兵士が集まってきた。

「あー、みんなすまん。ハルカに寝込みを襲われた時の対処法教えてたんや。あ、基地司令…。」

今日はブレイズが基地司令に連行されていった。ずぶ濡れのハルカは、体をふいて着替え、残された兵士と部屋の掃除をする羽目になった。

 

1時間ほど過ぎた後、ゲッソリしたブレイズが戻ってきた。

「ハルカ…遅くなってすまんな…さ、さぁ、これから訓練するで…。」

「ブ、ブレイズ、大丈夫??」

「ああ、ちょっと基地指令に絞られただけや…すまんかったな…。」

「ううん、大丈夫…。さ、いこ!」

二人は基地の前に広がる訓練場に向かって行った。

 

「さぁ!ハルカ!!まずはお前の能力見せてもらうで!話はそれからや!!それにしてもなんでお前も来たんや?」

ブレイズは急に元気になった。さっきスプリンクラーで浴びた水が乾いたからだろうか。

「ええ、ハルカさんに無茶な事させないか監視するよう少佐に命じられましたので。」

ミア少尉が監視についている。

「ハルカさん、無理しないでくださいね?初日からケガするようなことは無いでしょうけど…。」

「う、うん!まずは何をすれば…。」

「行くぜ!メテオフレイム!」

100メートルほど上空に、巨大な火の玉が現れた。

「さぁ、ハルカ、何とかせんと丸焦げやで?!」

「ちょっと、ブレイズ大佐?!」

「あ、あわわわわ…!!」

直径数十メートルはある火の玉が落ちてくる。

ドゴン!という大きな音とともに火の玉が地上に叩きつけられ、火炎が広がる。

「きゃああああ!」

ミアが伏せたまま、必死に爆風に耐えている。

…数十秒後、そこにはクレーターだけが残っていた。ハルカの姿はない。

「ちょ、ちょっとやりすぎたか…?」

「ハルカさん!?ハルカさーーん!!!」

ミアが涙を浮かべながら叫ぶ。

「大佐?!どうしてくれるんですか?!ハルカさん跡形もなく吹き飛ばされたじゃないですか!!!」

「あ、あはは…ハルカ…すまん…。俺、軍法会議にかけられるかもしれんな…。」

よく見ると、クレーターの中心に小さな白いドームのようなものがある。ピシっという音とともにドームが割れ、中から人が出てきた。

「う、うう…死ぬかと思った…。」

「ハルカさん…!!」

ミアが走っていき、ハルカに抱き着いた。

「ハルカさん…!よく無事で…!!ケガはないですか?!大丈夫ですか?!」

「ミ、ミア…?!大丈夫だよ!とっさに消火剤でドーム作って、中で酸素も発生させてたから…。」

「うむ!ハルカ、お前なら余裕で耐えると思っていたぞ!!」

「ブ、ブレイズひどいよ!あんな事するなら先に言ってよ…!」

「本当ですよ大佐!一歩間違えれば命は無かったですよ?!」

「あはは、すまん、ちょっと調子乗りすぎたわ…。よーし、能力のテストはこの辺にしたろ!!さっきのドーム、何でできてるんや?」

「リン酸アンモニウムだよ?耐えられるか微妙だったけどね…。」

「色々な薬剤を作る能力…!初めて見ました!」

ミアが興味深そうにドームの破片を手に取る。

 

「よし、あとは体力測定や!あんまり能力使いすぎたら体力測定にも影響出るからな!」

ここから、本当の地獄が始まる…。

全力疾走5km、持久走、障害物競走、砲丸投げ、マラソン、レスリング…。

「なんや、割と体力あるやんけ!!これなら戦闘訓練してもいけるな!!」

「ハァ、ハァ…もうだめ、動けないよぉ…。」

ハルカはグラウンドに倒れこんだ。

 

「ハルカさん、大丈夫ですか?!無茶させないでって言ったじゃないですか大佐?!」

「大丈夫や、ちゃんと水分補給もさせてたし、死にゃあせんww」

ハルカの息が整ってきた。

「じゃぁ、今日はここまで!また明日、訓練するから楽しみにな!」

「ふええ…もう無理ぃ…。」

「ハルカさん、明日は私の講義です。体育は休みにするよう、ブレイズ大佐には私から言っておきますので。」

「ありがとう、ミア…。」

ハルカはミアに抱えられて宿舎に帰っていった。

帰っていく二人を眺めながら、ブレイズは小声で呟いた。

「なんでや…。なんで俺は、戦い方も知らん女の子にあんな大技を使ったんや…。ハルカならいけるって、何故か自信があった…。」

 

 

第3話に続く

 

 

あとがき

第3話では、バトルも入れていきたいなぁ、、、と思って書いてます!色々含みのある感じで書いてますが、そのうち明らかになっていくのでお楽しみに~☆

 

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2023年11月16日