緋色のサファイア第10話

まえがき

前回の更新から少々間が空いてしまいましたすみません!今回は平和な(?)回です。いや、そんなに平和ではないかも…笑 途中で難しいお薬のお話が出てきますが、スルーしていただいて大丈夫ですw 楽しんでいってください♪

 

 

前回のあらすじ

ダルク軍に捕まったハルカ。先に捕まっていた銀河政府軍特務大佐のエリックと共に戦闘機を奪って脱出を図り、何とか逃げ切ったものの今度は政府軍機に敵と勘違いされ撃墜されてしまう。脱出装置により戦闘機から脱出し、二人は味方の惑星ホスファスへと降り立った。救援を求めようとしたが、機器の故障とエリックのエネルギー切れにより救難信号を出せない二人は、ひとまず休憩しながら一夜を明かした。

 

 

まぶたの裏が赤くなってきた。朝の柔らかな日差しに気付いたハルカはゆっくりと目を開けた。

「ん…もう朝かぁ…。ずいぶん寝ちゃってた…。」

焚火の焦げた匂いを感じながら、体を起こす。

「やぁ、おはよう。」

エリックが声をかける。

「うん、おはよう。ごめんね、けっこう寝ちゃってた…。」

「良いんだよ。僕もけっこう休んでたからね。」

エリックは川の水を焚火で煮ていた。少しいい匂いがする。お茶のようだった。

「はい、良い匂いでしょ。」

「ありがと。エリックが作ってくれたんだね。」

ハルカは手渡されたお茶を冷ましながら、少し飲んだ。少し痺れる感覚が、ぼーっとした頭を目覚めさせる。それにしても、この痺れは何だろうか。あまり気にせず飲んでしまったが、悪い予感がしたハルカはもう一度、お茶を口に含んでみた。

「うわっ、これ毒だよ?!私は大丈夫だけど、エリック飲んでないよね?」

「え!そうなの?もう飲んじゃった!」

「ちょっとー!」

ハルカの心配は的中し、エリックは急にふらつき初め、地面に倒れこんでしまった。ハルカが慌てて駆け寄る。

「あーあ!言わんこっちゃない!」

抗コリン作用のある毒のようだ。すぐに副交感神経刺激薬を作り、エリックに飲ませようとする。しかし、まともに飲むことができない。

「飲めないかな…?仕方ない、ごめんエリック!」

ハルカはエリックを起こし、口を無理やり開けて水で溶かした薬を流し込んだ。苦しそうな声を上げるが、構わず押し込んだ。

「注射器があればこんな無茶しなくても良かったんだけどなぁ…。」

エリックはぐったりとして動かなくなった。

「大丈夫かな…。効いてくれるといいんだけど…。」

 

10分ほど経つと、エリックは話すことができるくらいに回復した。

「やぁ…。迷惑をかけたね…。もう大丈夫そうだ、ありがとう。」

「ほんとに…。毒のある植物多いんだから、むやみに食べたり飲んだりしたりしたらダメだよ?」

エリックが完全に回復するまではそばを離れられず、時々焚火に薪を追加しながらハルカは寝転がるしかなかった。

 

「よし!もう大丈夫!ハルカちゃん起きて!」

「うわっ、びっくりした!」

いつの間にか寝てしまっていたハルカは、エリックの大声にたたき起こされた。そこには、ドヤ顔で立ち上がるエリックの姿があった。

「今日は僕も食料探し手伝うよ!食べられそうな木の実とか集めてくるから、ハルカちゃんは魚を捕ってきてくれるかな?」

「えー、心配だなぁ…。気を付けてね?あまり遠くに行っちゃダメだよ?」

「大丈夫大丈夫!何かあったら叫ぶから助けに来てね。」

そう言い残すと、エリックは森の奥へと走っていった。ハルカは少し心配しつつも、昨日と同じ川に魚を捕りに行った。

 

魚を捕ったハルカは拠点に戻り、下ごしらえを済ませた。まだエリックは戻って来ない。待っていても退屈なので、エリックを探しに彼が向かった方向へと歩き始めた。30分ほど歩くと、急に叫び声が聞こえてきた。

「ハルカちゃーーん!居たらこっち来てー!」

エリックの声だ。マズイことがあったのだろうか。ハルカは大急ぎで声のする方向へ向かった。

「どうしたの?!大丈夫!?」

「あっ、来てくれた!思ったより早いね!ほら、あれ見てよ。」

そこには、大きな熊のような動物がこちらを睨んでいた。次の瞬間、その動物はハルカの方へ突撃した。

「うわっ、やばくぁwせdrftgyふじこlp」

ハルカと動物は取っ組み合いになった。遺伝子の守りがある以上、ハルカに傷をつけることはできないが。

「ぬおおおお!!」

動物かハルカの声かよく分からないくらいの図太い声が響き、動物は投げ飛ばされた。恐れをなしたのか、そのまま逃げ去っていった。

「お見事っ!」

「もー!めっちゃ焦ったんだからね?!」

ハルカは頬を膨らませ、エリックを睨んだ。

「あはは、ごめんごめん。でも怒ってるハルカちゃんもかわ…いや、なんでもないよ!美味しそうな実を集めてきたからご飯にしようか!」

エリックが持っていたビニール袋には、いっぱいの木の実が入っていた。ハルカはそれを見て少しは機嫌を取り戻した。少し赤っぽくなった木漏れ日に包まれて、二人は拠点へと帰っていった。

 

陽の落ちるころ、焼けた魚の香りがあたりに漂っていた。エリックの採ってきた実の種を取りながら、ハルカは毒がないか試しにかじってみる。どうやら、ほとんどの実は食べられそうだ。

「今日は豪華だ!ほら、僕が取ってきた実、美味しいだろう?」

「うん、甘くておいしいのが多いね。今日は頑張ったね!」

「あの逃げて行った熊も食べられればなぁ…。」

「あれは凶暴すぎて仕留められないよ~…。」

たわいもない話をしながら、夜は更けていった。今日はエリックが先に寝て、ハルカが見張りをすることにした。

「ねぇ、エネルギー戻ってきそう?」

「うん、思ったより早く使えるようになりそうだよ。可愛い子と一緒にいるからかな?」

「もう、なによそれっ。」

ハルカがクスッと笑った。それを見て安心したエリックは、すぐに寝息を立て始めた。暗くなった空には、色とりどりの星が自由気ままに輝いていた。しばらく星を見る暇もなかったな、と少し懐かしく思いながら星空を見上げた。星を眺めているうちに、エリックと見張りを交代する時間が来た。昨晩はエリックに見張りを任せっぱなしで申し訳なく思っていたハルカは、少し長めに見張りをすることにした。

 

翌日、エリックの声でハルカは目を覚ました。

「ハルカちゃん、起きて。」

「ん…おはよう…。」

「見てよ!エネルギー戻ってきたよ!これで助けが呼べる!」

「わぁ…すごい…。」

叩き起こされたばかりのハルカは今一つ状況が理解できず、棒読みの返事しかできなかった。

「早く通信の準備をするよ!ほら起きて!」

よく分からないまま墜落した戦闘機の場所までエリックに連れられて行った。

「で、この残骸で何するの?」

「アンテナを拝借するんだよ。普通に発信するよりもアンテナ使う方が効率良いからね。」

そう言うとエリックは機首のパーツを取り外し始めた。すると、突起が無数についた円盤のようなものが現れた。

「これこれ!」

エリックは嬉しそうに、そのパーツを手際よく取り外す。

「何それ?」

「レーダーの送受信アンテナだよ。200キロくらい先までは電波を照射できるから、これで救難信号を遠くまで送信できるんだよ。」

そう言いながら、エリックはレーダーを完全に取り外した。座席のハーネスも取り外し、それをレーダーに括り付けた。

「ほら。これで背負えるよ。あとはこのコードから信号を送れば…。」

見た目には何も起こっていないように見えるが、エリックには分かるらしい。

「さぁ、のんびり歩きながら信号を送信しよう。味方に届いたら返信があるはず。あ、無線受信用のアンテナも持っておかないと…。」

そう言うと、また別のパーツを戦闘機から取り外し、レーダーの横に取り付けた。重そうだが、エリックには関係なさそうだ。

「さ、行こうか。手がふさがってしまって、ハルカちゃんと繋げないのが残念だね。」

「もー、繋がなくて良いよー!」

二人はのんびりと、喋りながら歩いた。エリックの背中にはアンテナが、ハルカの背中には焼いた魚が背負われていた。

 

数時間歩いたところで休憩を取った。日陰でハルカが背負っていた魚を食べ、二人は少し寝ころんだ。その間もエリックは通信を逃すまいと、アンテナを抱きかかえていた。その時だった。

「ハルカちゃん!味方から通信が届いたよ!聞こえないと思うけど、僕が通信するね!」

「ほんと?!やった!やっと帰れるよー!」

エリックが目を瞑ってじっとしている。メッセージを送信しているのだろうか。

「よし、このアンテナからの電波の位置が大体わかったみたいだから、すぐに迎えに来てくれるって。ここで動かずにじっとしていよう。」

「良かったー…。やったね!」

 

しばらくくつろいでいると、甲高い音とともに軍の輸送機が見えた。開けたところに着陸していく姿が見えた。

「よし、来たみたいだ!行こう!」

「うん!」

兵士に迎えられ、二人は輸送機に乗り込んだ。

「ふう、ハルカちゃん、お疲れさん。」

「エリックも!一人だと絶対無理だったよ…。」

安心したのか、二人はすぐに輸送機で寝てしまった。二人の寝顔と一緒に、兵士たちは勝手に記念写真を撮るのであった。

 

「つきましたよ、大佐、ハルカさん!」

「んあ…。おはよう…。」

扉が開き、外の空気がブワっと入ってきた。暖かい日差しも差し込む。

「さあ、こちらへ。医務室で体調を確認しますので!」

寝起きの目をこすり、言われるがまま医務室へと向かっていった。

 

診察を終え、シャワーを浴びて着替えたハルカは、一時的にあてがわれた部屋を出た。

「ハルカちゃん!」

聞き慣れた声に振り向く。

「ハルカちゃん、体調は大丈夫かな?」

「もちろん!エリックも問題なさそうでよかったよ。」

「このくらい、何てことはないさ!ささ、出会った記念に写真を撮りに行こう。」

「写真…?」

エリックはハルカの手を引き、基地の裏手に回った。

「ほら。この基地は草原が広がっていてきれいなんだ。カメラマンも呼んでおいたからさ。出会った記念の写真を撮っておこうよ!」

「わぁ…!広い…!」

広大な草原をバックに、カメラマン役がシャッターを切る。するとすぐに、別の兵士が来た。

「大佐!お呼びがかかっています!すぐにお越しください!」

「あーあ、良いところだったのに…。ハルカちゃん、また後でね。君、写真はデータを送ってくれ。あとでハルカちゃんに手紙を書くから、写真を印刷して一緒に渡しておいてね。」

エリックがカメラマンの兵士の肩をポンとたたくと、その場を後にした。

「あ…ハルカさん、自分も写真良いですか?」

「もちろん!エリック忙しそうだねぇ…。」

「大佐は情報戦が得意な方ですからね。今回の件について上層部から根掘り葉掘り問い詰められるんでしょうなぁ…。」

カメラマンの兵士とも写真を撮り、部屋へと帰って行った。

 

いつの間にかハルカは眠ってしまっていた。疲れが溜まっていたようだ。ベッドでしばらく寝ころんでいると、ノックが聞こえてきた。

「はーい!」

「お食事をお持ちしました!入りますね。」

一緒に写真を撮った兵士が、食事を持ってきてくれた。食事にはピンク色の封筒がついていた。

「大佐からのお手紙です。食べ終わる頃にまた、回収に伺いますのでごゆっくり。」

「うん、ありがとう。」

早速、エリックからの封筒を開けてみた。そこには、読んでいて恥ずかしくなるような長文がぎっしりと書かれた手紙と、草原で撮った写真が入っていた。

「もう、何言ってるのよ。」

手紙の内容に呆れつつも、新たな友人ができたことを嬉しく思いながらゆっくりと食事をとった。食べやすいものを作ってくれたのか、オムレツに柔らかいパンと野菜のスープだった。

「おいしい…。」

久々の平和な日に安心したハルカは、食事が終わってすぐに眠りについた。

 

あとがき

ちょっと文字数多くなりましたメンゴです!挿絵が先にできてしまったので、そこまで進めようとすると長くなっちまいましたw

無事に帰ることができて、お話を続けられます~パチパチパチ~♪ 更新遅くて恐縮ですが、頑張って書いていくのでまた読んでいただけると嬉しいです!

 

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2024年1月21日